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役人が「忖度」をすることによって得られる報酬とは?

古賀茂明×望月衣塑子が「独裁者」を斬る!③

■「忖度したときの報酬」と「忖度しなかったときの損失」の差が大きい

撮影/佐々木芳郎

古賀 そして、これが最も重要なのですが、役所では他の民間組織などに比べて、「忖度したときの報酬」と「忖度しなかったときの損失」の落差が、極めて大きいのです。忖度には、常に違法まがいの問題が付きまとう。だから、本来は忖度しない方がよいのです。しかし、忖度しないと上司ににらまれ、出世が遅れたり、その道を閉ざされたりする。

 もちろん、忖度に背を向けて役所を辞めるという選択肢もあります。しかし、その場合、退職による直接の不利益だけでなく、その後の人生においても、役所との関係でずっと差別的に取り扱われるリスクを覚悟しておかなくてはいけません。例えば、民間企業に就職したとしても、どこかで元の役所とのかかわりが生じたときに、嫌がらせをされるということです。江戸の敵を長崎でという感じですね。

 忖度が、ある程度出世につながるのは民間組織も一緒でしょう。しかし、定年後も会社が面倒を見てくれる人は限られるのではないでしょうか。役所の場合は、人事当局が退職後の天下りの差配をします。キャリア官僚だと少なくとも70歳くらいまでは、役所の世話になる人が多いわけです。したがって忖度への報酬は、定年の60歳以降も10年にわたって続くのです。

望月 そのためなら、明らかな嘘や沈黙も…。

古賀 真実を語らず、文書廃棄までして守り通した安倍政権に対する「忖度」には大きな報酬が約束されています。今後、財務省の官僚が処分されずに終わるか、処分されても、ほとぼりが冷めたころにはしっかり処遇される可能性は極めて高いと見た方が良いでしょう。

望月 既定路線だったのかもしれませんが、佐川理財局長は国税庁長官にまで昇り詰めました。国会答弁がすべて嘘だったとハッキリしているのに出世。しかも就任会見はしないと発表して世間の失笑を買っていました。11月22日に会計検査院が「値引きの根拠がない」と発表した際も、佐川さんは夕方5時に退庁したのに、役所の「在庁」のランプを点けっぱなしにして、記者の追及から逃れようとしていたと取材したマスコミ側から聞きました。逃げてないできちんと出てきて欲しいです。

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古賀茂明×望月衣塑子

こが しげあき×もちづき いそこ

古賀 茂明(こが しげあき)

1980年東京大学法学部を卒業、通商産業省(現・経済産業省)に入省し、大臣官房会計課法令審査委員、経済産業政策局課長、中小企業庁経営支援部長などを歴任。2008年国家公務員制度改革推進本部事務局審議官に就任し、急進的な改革を次々と提議。2011年3月の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故を受け、日本で初めて東京電力の破綻処理策を提起。その後、経産省から退職を勧告され辞職。著書に『日本中枢の狂謀』(講談社)『国家の共謀』(角川新書)他多数。



望月 衣塑子(もちづき いそこ)

慶應義塾大学法学部卒業、東京新聞に入社。2004年日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑をスクープし、自民党と医療業界の利権構造の闇を暴く。2009年足利事件の再審開始決定をスクープ。東京地裁・高裁担当、経済部記者などを経て、現在は社会部遊軍記者。防衛省の武器輸出政策、軍学共同などを取材。森友・ 加計疑惑で菅官房長官に斬り込み、これを契機に追及が加速し話題を集める。二児の母。趣味は子どもと遊ぶこと。著書に『武器輸出と日本企業』『新聞記者』(角川新書)など。


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